〔平成8年度:研究区分C〕
(新潟大学工学部)田邊 裕治
(マルキチ建設リース(株))遠藤 吉一
1. 研究の概要
実用炭素鋼の腐食疲労強度について、高応力レベル(低サイクル域)での寿命データに基づいて低応力レベル(高サイクル域)での寿命を予測するための簡便な手法を考案した。
本研究では、安全を期するために、外力として衝撃力が繰り返し作用する場合について検討を行った。
2. 成果の概要
まず、供試材に対して繰返し引張衝撃力を与えることの出来る衝撃疲労試験機を試作開発した。その概略を図1に示す。本試験機は荷重繰返し速度0.8 Hzで持続時間2 ms、最大引張応力50〜150 MPaの三角波状パルスを発生させることが可能である。供試材には市販の機械構造用炭素鋼S45Cを用い、両側にV型切欠きを有する平板試験片を製作した。衝撃疲労試験は室温空気中および腐食環境(人工海水:3.5%NaCl水溶液)中で行った。切欠き底付近を光学顕微鏡により連続的に観察し、き裂の発生および伝播挙動を調べた。
き裂発生寿命および破断寿命は腐食環境中で低下した。特に低応力レベルで腐食環境はき裂発生寿命を著しく低下させた。一方、き裂伝播寿命は応力レベルに依らず腐食環境の影響は見られなかった。切欠き底近傍の腐食疲労破面では粒界破壊が観察され、腐食は結晶粒界に沿って疲労初期に進行することが推測された。
高応力レベルでの腐食環境中における疲労強度の低下率を腐食時間によって定式化するとともに、その式を用いて低応力レベルでの腐食疲労強度を推定してみた。その結果を図2に示す。図中の破線が破断寿命の予測結果であり、実験結果とほぼ一致している。
3. まとめ
腐食環境中で繰返し引張衝撃荷重を受ける機械構造用炭素鋼の疲労強度について調査した。腐食環境はき裂発生寿命を低下させること、それも低応力レベルで著しいことが明らかにされた。低応力レベルにおける破断寿命は高応力レベルでの実験データから予測可能なことが示され、腐食疲労強度の迅速評価法開発への途が開かれた。